Waves vs UAD vs Softube 〜 3大メーカーAPIプラグイン比較レビュー!
どうも,むるえかです.
API(Automated Processes, Inc.)はアメリカの音響機器メーカーで,コンソールやLunchboxに代表されるアウトボードなどを製造しています.ほとんどすべての機器に搭載されているオペアンプAPI2520の特徴から,「アメリカンな」「乾いた音」などとよく表現されていますね.
APIをモデリングしたプラグインは,有名なところではWavesのAPI Collectionなどがあります.つい最近,LUNA(Universal AudioのDAW)にAPI Summingが加わり,選択肢も増えてきました.そこで,(無駄に買い込んでしまわないためにも!)それぞれを比較したいと思います.なお,実機との比較ではないのでそこは悪しからず.
測定
それぞれのプラグインに対し1kHzのサイン波をテストトーンとして入力し,それぞれの応答を比較しましょう.
Waves API Collection
API 550A/B,2500が入ったバンドルです.API 550A (s)に入力し,EQはすべてフラットにしてANALOGスイッチをオンにしてあります.ゲインを上げていくと低域にもともとなかった音が現れています.また,二次倍音の形が他のプラグインと比べていびつです.
-9dB
-1dB
+6dB
UAD API Vision Channel Strip
Legacyとの違いは,出力段のフェーダーとバッファアンプのモデリングの有無だそうです.-9dBではほとんど倍音がないのに,+6dBではどのプラグインよりも倍音が出ています.+2dBで他のプラグインと似たような出力になります.(この積極的な歪み方こそが多くのユーザーをUADの虜にするのかもしれませんね.)なお,Legacyでの倍音の出方は新バージョンよりおとなしめです.
-9dB
-1dB
+2dB
+6dB
+6dB (Legacy)
Softube Amerian Class A
SoftubeのConsole 1プラグインに似ていますが,これは単独で使用できます.UIも大きく,EQやコンプのグラフも出るため操作性がとても良いです.
-9dB
-1dB
+6dB
(参考)Lindell 80 Channel
参考までに,Neve系のプラグインであるV-EQ3とLindell 80の応答を載せておきます.このように比較すると,いずれのプラグインもAPI特有のキャラクターというものを表現しようとしているということがわかりますね.
V-EQ3
Lindell 80
(おまけ)Lindell 50 Channel
(UAD API Vision ChannelのLegacy/新バージョンの区別をしなければ)最も後発のプラグインで,BrainworxでおなじみTMTが使用できるのが特徴です.他のプラグインにはない3次倍音が現れており,キャラクターが異なります.EQやコンプの音も違うので,これは別物として比較から外しましょう.
-9dB
-1dB
+6dB
EQ
APIのEQは,Propotional Qとよばれるゲインを上下でQ値が変化する特性が特徴的です.Constant Q(ゲインによらず一定のQ値を取るEQ)ではSSLのSL4000Eが有名ですね.
EQの特性を比較してみるといずれのプラグインもかなり似ており,別のプラグイン同士で左右にパンを振っても全くわからないくらい似ています.ただ,サミングゼロはしない(入出力段の特性の時点でできない)ため,厳密に一致しているわけではないようです.
3kHz,+6dBブースト(上:Waves,下:UAD)
コンプレッサー
SoftubeとUADはモデリング元が同じなのか,とても似ています.WavesはAPI 2500なので,こちらもUAD版と比較するべきなのかもしれませんがそれはまた今度.近いパラメタに対してどのプラグインも似たような音を出しますが,Softube・UADどうしだとほとんど差がないのに対して,WavesのAPI 2500だと僅かに利き方が異なるようです.Thrustの設定によるものでしょうか?
ゲート
WavesにはAPIのゲートがないため,SoftubeとUADの比較になります.Softube American Class Aのゲートは,アタックが遅く,さらにHOLDが使えません.ドラムのミックスでは不便かもしれませんね.一方,UADのゲートはとても使いやすいですね.
UAD
Softube
ヒアリング
それぞれのメーカーのプラグインを聴き比べると,Wavesはやや詰まった感じ,UADはとてもクリア,Softubeはややじゃじゃ馬...といったところです.それぞれの特性を考慮に入れると,あながち間違っていません.Softube American Class Aに-3dBくらい削ってから入力し,出力で+3dBしてあげるとUADにとても似た音になります.Wavesについては,(もったいないけれど)Analogを切ってしまったほうがしっくりくるような気がします.
まとめ
どのメーカーも非常に完成度が高く,特別どれが優れているというわけではなさそう,というのが個人的な感想です.どこか一つのメーカーのものを持っていたらそれで十分で,あとはお財布事情と操作性,どのメーカーにお布施をするか(WUPやUAD-2 DSPなどのお布施もある)...など総合的に判断すれば良いと思います.
余談
Big SurでLogic Proで2個以上のインスタンスを起動すると落ちる....Pro Toolsなら大丈夫なんだけどね.正式対応を待ちましょう.